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2025/8/5
【次世代炭素材料】3DC、NEDO DTSU PCAフェーズへの採択とシリーズA 1stクローズにより合計24.5億円調達。「GMS」の量産工場の着工開始
3DCは、シリーズAラウンド 1stクローズ、並びに、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業」(DTSU事業)のPCAフェーズ(実証化研究開発(後期))に採択され、合計で24.5億円の資金を調達した。これにより3DCは、日本で発明された次世代炭素材料であるGraphene MesoSponge(R)(GMS)の、世界で初めての量産工場の着工を開始する。GMSは主にリチウムイオン電池向けの機能性導電助剤として販売される予定で、材料供給規模はリチウムイオン電池の容量換算でおよそ3GWhとなる。

■これまでの取り組みと本資金調達の目的
3DCは、2022年の設立以来、東北大学にて発明された次世代炭素材料「Graphene Mesosponge(R)(GMS)」の社会実装を目指し、製品開発および製造技術の確立に取り組んできた。2024年2月には、リチウムイオン電池向けの導電助剤グレードGMSの出荷を開始し、以降、国内外の複数の電池メーカーと商用化に向けた性能評価・実証試験を進めている。
GMSはその優れた電子・イオン導電性、化学的・物理的耐久性、構造制御性などを活かし、機能性導電助剤としてリチウムイオン電池の性能を大幅に向上させる有効性が明らかになっている。これまでの開発や性能評価・実証試験の取り組みを通じて潜在顧客からの需要が急速に高まりつつあり、足元、同社の生産能力の拡張が喫緊の経営課題となっていた。
さらにGMSは、導電助剤としての用途にとどまらず、近年注目を集めるシリコン炭素複合負極(Si/C)の足場材としても高いポテンシャルを有している。自社で行ったラボスケールの試作検証では、従来材料を上回る特性を示しており、現在は事業パートナーとともに製品化に向けた応用開発を推進している。こうした用途については、特に電池のアプリケーションが航空モビリティなど多様化する中、電池産業の次なる革新領域として、将来的に大規模な需要が見込まれている。
加えて、3DCは2024年8月、内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に採択された。採択テーマ「新炭素材料GMSを用いたリチウムイオン電池の電極プロセス革命~炭素とスラリーを制する者が電池を制する~」のもと、電池製造工程の中でも特に難易度が高く、歩留まりの課題を抱えるスラリー製造プロセスに対して、事業パートナーと連携し、製造高度化を目的としたデータ駆動型アプリケーションの開発を進めている。
こうした複数の取り組みを通じて、3DCは電池材料スタートアップとして、技術開発と事業化の加速を図ってきた。同時に、「日本発の材料技術を、日本企業として世界で初めて量産する」というビジョンのもと、事業活動を推進している。2023年7月には、株主であり戦略的パートナーでもある高砂工業の厚意により、岐阜県土岐市の敷地内にある高砂工業の旧工場建屋を転用し、3DCの事業所兼パイロット工場を開設した。これにより、2024年2月より導電助剤GMSの製品出荷を開始し、以降、毎月継続的に新規出荷を行っている。このたび、顧客側での評価進捗および旺盛な製品提供の引き合いを受け、当初予定を約1年前倒しする形で、これまでのパイロット工場を拡張する形での量産工場の建設を決定した。これにより、GMSの生産技術確立を通じた産業変革アプリケーションの社会実装、およびパートナー企業との連携強化による事業拡大を目指し、シリーズAによる資金調達を実施した。なお、同量産工場の稼働開始は2026年末頃を予定している。
今回の資金調達における助成金部分については、2024年9月に採択されたNEDO DTSU GX事業において、当初計画では2026年8月末までの24カ月のSTSフェーズについて、僅か9カ月でステージゲート審査を通過、PCAフェーズへの移行が承認され、同フェーズにおいて今後3年間で最大10億円が助成される予定。また、エクイティ部分については、プレシリーズAラウンドから引き続き、日本有数のVCであるANRIをリード投資家とし、8社から合計で14.5億円の第三者割当増資による出資を実行した。調達資金の使途については、1)岐阜県土岐市に有するパイロット工場の拡張による量産工場の建設・設備投資、2)電池材料やデータ駆動型アプリケーションの研究・開発、3)人材・製品供給体制の強化や海外パートナーシップの深化、などに用いることを予定している。なお、今回のシリーズを受け、これまでの累計エクイティ資金調達額は25.2億円、累計助成金獲得額は28.1億円、計53.3億円となっている。
<今回の調達資金の使途>
•量産工場建設に係る設備投資
•GMSの量産プロセス(トンスケール)の確立のための各種研究開発
•顧客評価用・商用化GMSのグローバルへの供給体制の強化
•研究開発人材の拡充と海外パートナーシップの深化 など
<出資引受先(順不同)>
•ANRI
•三菱UFJキャピタル
•Golden Asia Fund Ventures(三菱UFJキャピタルと台湾のITICが共同で設立したVC)
•ソニーイノベーションファンド
•ケイエスピー
•大阪大学ベンチャーキャピタル
•三井住友海上キャピタル
•七十七キャピタル
•共立ホールディングス
■ GMSについて
GMSは、炭素1原子分の厚みでスポンジのような三次元構造を備えた「三次元型のグラフェン」素材。柔軟性や多孔性、導電性、耐食性といった複数の優れた性質を併せ持つ革新的な材料であることから、電池における「容量を向上させようとすると別の特性が低下する」トレードオフ問題を解消し得る炭素材料として、全世界から注目されている。
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