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2025/8/23

【バイオセンサ】ペルノックス、海外依存問題を解決する生体電極フィルム&ペースト開発

 特殊化学品メーカーのペルノックスは、生体電極業界が長年抱える海外依存問題の根本解決を目指し、生体電極用フィルム「SilkyLink® MFX-1100」と生体電極用ペースト「Pertron® K-398Xシリーズ」を同時発表した。
 現在、日本の生体電極市場はフィルム型・ペースト型ともに海外製品が主流となっており、地政学リスクによる供給不安定、長期化するリードタイム、コスト上昇が深刻な課題となっている。同社は50年超の材料技術を結集し、「すぐ使えるフィルム」と「自由設計できるペースト」という2つのアプローチで、この構造的課題の包括的解決を実現する。
 バイオセンサ業界が直面する3つ課題がある。
(1)フィルム電極の品質ばらつきが深刻、海外製品の信頼性問題
 フィルム型生体電極は海外製品のみで、塗工技術による品質の不安定性がバイオセンサ機器の信頼性確保が困難、加えて地政学リスクによる調達不安も恒常化。
(2)長期リードタイムで急な需要に対応できない
 海外調達による3~6カ月の長期リードタイム、為替変動によるコスト上昇で事業計画の不確実性が増大。
(3)PVC基材で廃棄処理が高額、環境規制も厳しく
 海外フィルム製品のPVC基材使用による廃棄処理制約、将来的な環境規制強化への対応課題。

 そこでペルノックスは、生体電極用フィルム「SilkyLink® MFX-1100」を開発した。
 生体電極用フィルム「SilkyLink® MFX-1100」には次の3つの機能がある。
(1)貼るだけで即座に電極化:製造工程不要、切り出すだけで即座に利用可能
(2)国産初のX線透過性:電極装着したままX線撮影可能、手術効率の大幅向上
(3)高屈曲性:複雑な曲面にも確実に密着、ウェアラブルデバイスの体動に完全追従
 これらを実現した背景には、同社の次のような強みが生かされている。
・独自開発の銀/塩化銀インクを、導電性カーボン配合ポリウレタンフィルムに3μmの均一な厚みでコーティング。海外製品で課題となっていた品質ばらつきを解消し、安定した導電性を実現。
・特許技術による競合優位性:フォーミュレーション技術とフィラー分散技術について特許を取得済み。50年超の材料開発実績に基づく独自技術により、他社では模倣困難な高品質を保証。
 生体電極用フィルム「SilkyLink® MFX-1100」は次のような用途が想定されている。
<生体インピーダンス測定用途>
(1)医療分野:5AED用電極パッド、ホルター心電図、脳波測定電極、筋電図測定電極
(2)ヘルスケア分野: ウェアラブル心拍モニター、フィットネス用心拍計、スポーツ用筋電図
<電気化学センサー参照電極用途>
(1)医療・臨床検査: 血糖値測定器、血液ガス分析装置、臨床検査用イオンセンサー
(2)環境・食品分析: pH計、溶存酸素計、水質測定器、食品分析装置
(3)産業・プロセス監視: 工業用pH測定、発酵プロセス監視、品質管理センサー
<研究開発分野>
 生体信号研究用電極、医療機器プロトタイプ、大学・研究機関での実験用

 一方、バイオセンサー向け銀/塩化銀ペースト「Pertron® K-398Xシリーズ」は、
(1)エポキシ樹脂バインダー採用による優れた接着性、フィラー粒径制御(平均3~5μm)による均一分散、130℃×20分の効率的な非熱硬化プロセスを実現
(2)独自配合技術:溶剤系配合技術により長期保存安定性を確保。ペルノックスの材料技術ノウハウにより、印刷性と電極特性を両立した革新的ペーストを開発
したことにより、次のような特徴がある。
(1)スクリーン印刷で自由設計: 任意の形状・サイズの電極を印刷により製造
(2)4段階の用途別最適化: 短期間用途から長期埋め込み用途まで銀/塩化銀比率を最適配合
(3)精密測定対応: 一般的な銀ペースト・カーボンペーストでは困難な精密測定に対応
(4)優れた作業性: 長時間連続印刷対応、粘度調整自由、25℃×24時間のポットライフ
 バイオセンサー向け銀/塩化銀ペースト「Pertron® K-398Xシリーズ」の想定用途は次の通り。
<生体インピーダンス測定用途>
(1)医療分野: 心電・筋電電極、脳波電極、マイクロニードル電極
(2)ヘルスケア分野: ウェアラブルセンサー、スポーツテック機器
<電気化学センサー参照電極用途>
(1)医療・バイオセンサ: 血糖センサー、血液分析装置、バイオチップ
(2)分析・測定機器: pH測定電極、イオン選択電極、環境測定センサー
<産業分野>
 プロセス監視センサー、品質管理システム、水処理監視装置

 現在、複数の大手メーカーにて性能評価が進行中であり、従来製品と比較して優れた品質安定性と環境適合性が確認されている。2026年の本格供給開始に向けて、品質管理体制の確立と供給体制の構築を進めている。

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