アーカイブ情報
2024/12/16
【経営】エボニック、スリム化・差別化を図るため新体制導入
エボニック インダストリーズ(本社:ドイツ、エッセン 以下「エボニック」)は、新たな組織体制を導入し、大幅にスリム化されたマネジメントモデルに移行する。これまで4つの事業部門内に設置されていたビジネスラインについては、取締役会が直接指揮を執る。今後は、2つのセグメント体制で事業経営を行い、差別化を図る。
エボニックは近年、成長性とレジリエンス(強靭性)、そして地政戦略的バランスに重点を置いたポートフォリオを展開してきたが、今回の大規模な組織再編を経て、新たなステップに踏み出す。「当社は近年、ポートフォリオの質を大幅に向上させてきました。しかし現在は、スペシャルティケミカルにのみ注力するだけでは会社を前進させるには十分でなくなってきました。その言葉自体、曖昧な意味しかもたなくなり、お客様や資本市場の視点から見ても十分に差別化をおこなえなくなってしまいました。そのため、今後はソリューションとイノベーション主導型ビジネス、およびテクノロジーと効率主導型ビジネスを2本柱に据え、それぞれの強みを生かして経営の差別化を図ります。新しいマネジメントモデルは、このアプローチを考慮したものとなっています」と取締役会長(CEO)のクリスチャン・クルマン(Christian Kullmann)氏は述べる。
「カスタム・ソリューション」と「アドバンスド・テクノロジー」
現在、エボニックは、スペシャルティアディティブス、ニュートリション&ケア、スマートマテリアルズ部門として化学事業を運営している。エボニックグループは、2025年4月1日から施行する新体制で、「カスタム・ソリューション(Custom Solutions)」、および「アドバンスド・テクノロジー(Advanced Technologies)」という2つのセグメントに組織を再編する。これにより、より明確な戦略的集中と資源配分が可能となり、各ビジネスモデルに応じた事業経営を行い、更なる差別化を図ることができる。両セグメントは、それぞれ年間約60億ユーロの売上高を計上している。
監査役会会長のベルント・テニェス(Bernd Tönjes)氏は、「監査役会は取締役会が打ち出した新たな戦略とグループの構造改革を全面的に支持しています。新体制により、エボニックは高い収益性を確保した成長を遂げる可能性を最大限に引き出せると確信しています」と述べている。
「カスタム・ソリューション」セグメントは、イノベーション主導型のビジネスモデルを特徴としている。特定のニッチ市場で事業を行い、顧客との距離が近く、カスタマイズされたソリューションを展開することで、価格設定の主導権を担っていく。従業員約7000人を擁するこのセグメントは、買収も重要な目標としている。塗料・コーティング用添加剤、化粧品・医薬品業界向けの製品が含まれる。
「アドバンスド・テクノロジー」セグメントは効率主導型で、高度な技術的専門知識と卓越したオペレーションを特徴とするため、世界的にも非常に高いコスト競争力を持つことができる。約8000人の従業員を擁する同セグメントには、高機能ポリマーや過酸化水素製品の製造などが含まれる。
この2つのセグメントは相互に補完し合い、エボニック・グループが価値創造を行う上で、どちらも極めて重要な役割を果たす。「カスタム・ソリューション」セグメントは、成長ドライバーとしての役割を担い、調整後EBITDA(支払利息・税金・減価償却費控除前利益)の成長において、大きな貢献を果たす。「アドバンスド・テクノロジー」セグメントは、より資金供給的な役割を果たし、キャッシュフローを生み出す。またROCE(使用資本利益率)を全事業の主要指標とする。両部門が牽引力となり、エボニックはグループレベルで資金を獲得する。
同時に、両セグメントを通して、サステナビリティを推進していく。エボニックは、持続可能性に優れた製品、いわゆる次世代ソリューションの占める割合を、2030年までに50%以上に拡大することを目指す。
マネジメントモデルのスリム化
エボニックグループの中核をなす事業部は、企業活動の中心となっている。2026年末まで組織構造の改善に取り組む「エボニック・テーラーメイド」プログラムは、長期的に大幅なコスト削減を実現するもので、この原則に則っている。計画段階を経て、今年すでに最初の構造的措置が実施された。これにより、意思決定とプロセスが迅速化され、管理職も大幅に削減される。プログラムの終了時までに、エボニックはグループ全体のマネジメントレベルの階層数を平均10段階から最大6段階までに削減すると同時に、3000以上の組織単位の廃止も行う。
この取り組みは、新たな組織体制で実施されるスリム化を図ったマネジメントモデルに反映されている。2025年4月1日時点で事業部門(Division)は廃止になり、それにともなう管理業務が完全に撤廃される。新たなセグメント内にそれぞれ集約されるビジネスラインは、取締役会の担当役員によって直接運営が行われる。
「カスタム・ソリューション」セグメントは、アメリカ国籍を持ち、現在スマートマテリアルズ部門の責任者を務めるローレン・ケルセン(Lauren Kjeldsen)氏が指揮を執る。「アドバンスド・テクノロジー」セグメントは、フランス国籍で現在スペシャルティアディティブス部門の責任者であるクローディン・モレンコフ(Claudine Mollenkopf)氏が統括する。両氏は2025年4月1日付で取締役に就任する予定。
クルマン(Kullmann)氏は、「当社の取締役会はさらに国際色豊かになり、女性の占める割合も高くなります。ローレン(Lauren)とクローディン(Claudine)はリーダーとして既に大きな功績を築いており、取締役会で一緒に仕事ができることを楽しみにしています。力を合わせてより良いエボニックにしていきます」と述べている。
ケルセン(Kjeldsen)氏は、各セグメントの他、イノベーションおよび南北アメリカ地域を、モレンコフ(Mollenkopf)氏は、アジア太平洋地域およびオペレーショナル・エクセレンス(製造拠点の継続的なプロセス改善)を担当する。
最高人事責任者兼労務担当取締役のトーマス・ヴェッセル(Thomas Wessel)氏は、新年度から、パフォーマンスインターミディエイツ事業を含むインフラストラクチャー部門と、技術面でサステナビリティを推進する新たな次世代テクノロジー部門の責任者も兼務する。
2017年から取締役会副会長を務めてきたハラルド・シュヴァーガー(Harald Schwager)氏は退任する。またニュートリション&ケア部門代表のヨハン・カスパー・ガメリン(Johann-Caspar Gammelin)氏、およびパフォーマンスマテリアルズ部門代表のヨアヒム・ダム(Joachim Dahm)氏も退任する予定。
- カテゴリー
- コンバーティングニュース