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2024/5/21

【自動車塗装工程におけるCO2削減】積水化学工業、「塗料転写シート」開発

積水化学工業の高機能プラスチックスカンパニーは、テープ製造などで培った材料設計・配合・成膜技術を活用し、自動車塗装工程でのCO2削減に貢献可能な「塗料転写シート」を開発した。

「塗料転写シート」を使用したモック

開発の背景
 自動車の製造工程におけるCO2排出量の内訳は塗装工程が約20%と最も多く、自動車産業におけるカーボンニュートラルの達成に向けて大きな課題となっている。同社は長年にわたりテープ製造技術や素材配合技術を培ってきた。これらの技術を応用して塗料をシート化し、塗装工程を通さず転写により塗装を実現する技術を開発した。この技術は塗装の品質を保ちつつ、カーボンニュートラルの実現に向けた解決策の1つになると考えられている。
塗料転写シートの特徴
・同社独自技術で膜化した塗料(塗料層)を転写フィルムと支持フィルムで挟んだ構成(図1)
・塗料層の厚みは通常塗装と同じ数十μm
・ロール状態で保管可能(図2)

図1 塗料転写シートの基本構成                  図2 ロール状態の製品形態

・塗料層には、さまざまな塗料が適用可能
 ※開発品の塗料層は、自動車外装で実績のある熱硬化塗料を同社でアレンジしたものであり、新車塗料と同等の硬化条件で自動車外装スペックを満たす(表1)。

表1 塗料転写シートの性能比較

■塗料転写プロセス

※塗料層は粘着性があり、粘着テープのように貼り付けることができる。ラッピングフィルムのように手で貼ることも可能だが、真空成形も可能(図3)。また、TOM (Three dimension Overlay Method)にも対応可能。

図3 真空成形により制作したモック

■本技術の効果
 近年、ルーフ色がボディ色と異なるツートンカラー車が人気となっている。このツートンカラー車は塗装ラインを1色目と2色目で2回通して製造する。塗料転写シートを2色目としてルーフに適用すればCO2排出量をおおよそ半減させることが可能となる(図4)。さらに、マルチトーンや個性的なライン意匠など複数回の塗装を繰り返すデザインでは、削減率はより高くなる。

 図4 ツートン塗装によるCO2削減イメージ(同社計算)

今後の展望
 塗料転写シートは、2026年の上市を計画しており、現在、量産技術および貼付け技術の確立に向けた取り組みを行っている。また、低温硬化技術の設計を進め、より耐熱性の低い樹脂製被塗物にも塗装対象を広げ、自動車製造におけるCO2削減という社会課題の解決を図る。

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