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2025/8/21

【蓄電コンクリート】東京都、AIZAWAとMITの「蓄電コンクリート」共同開発支援、GX関連産業創出支援事業に採択

 東京都が推進する「GX関連産業創出へ向けた早期社会実装化支援事業」において、會澤高圧コンクリートと米マサチューセッツ工科大学(MIT)が共同で開発を進めている「蓄電コンクリート」がこのほど支援対象事業として採択され、8月20日、都の産業労働局より正式発表された。

 事業の正式名は「コンクリートを蓄電池に変える“蓄電コンクリート”を活用した分散型充放電インフラの開発と実証」。都は「電力をへらす、つくる、ためる」(HTT)のスローガンのもと、GX関連産業の創出を柱とする産業・環境政策に力を入れており、住宅分野を中心にインフラの要の素材であるコンクリートの蓄電池化技術の可能性を高く評価したとみられる。都は、向こう2か年の研究開発プログラムに対し、総額2億円を支援する予定。

 同事業は、建築材料として最も広く用いられるコンクリートに導電性を付与し、蓄電機能を持たせることで、建築物や都市インフラそのものをエネルギー貯蔵装置へと進化させる新たな社会基盤の創出を目指すものだ。再生可能エネルギーの普及において課題とされる「発電と消費の時間的不一致」を解決する鍵として蓄電機能を都市構造体に組み込み、レジリエンス強化とGX推進に貢献していく。

 今回の採択に伴い、同社は以下の3つの開発を柱に、東京都におけるGXモデルの実現に向けた実証的な取り組みを進めていく。


1. 標準蓄電モジュールの開発
 蓄電コンクリートの基本構造である電極・セパレーター・電解液を一体化した「標準蓄電モジュール」を開発する。これは開発の第2フェーズとなる自由設計による蓄電ハウジング開発、並びに第3フェーズの戸建住宅向け蓄電開発事業のいずれにも共通する基盤技術となる。蓄電容量が300Wh/m³、100V級の出力を持つ蓄電コンクリート1m³スケールの標準ユニットを試作し、製造性・施工性・耐久性・充放電性能などの観点から、蓄電コンクリートの実用性を評価する。

 同モジュールの開発を通じて、都市部のさまざまな空間に適応可能な蓄電構造体の基本性能を確立し、今後の用途開発のための中核技術として位置付けている。

標準蓄電モジュール概要図

2. 自由設計による蓄電ハウジング開発
 集合住宅や公園等の公共性の高い空間に設置可能な、蓄電コンクリートを内蔵したベンチ・モニュメント等の屋外型インフラを開発する。コンクリートは金型に依存した規格量産品とは異なり、用途や使用箇所に合わせてサイズや形状を自由に設計できる利点がある。多様なデザインに対応するため、コンクリート3Dプリンターを活用した自由形状ハウジング(蓄電コンクリートの外装)の設計・施工方法を検証し、意匠性・施工性・耐久性を備えた商品化を目指す。さらに、非常時には地域のエネルギー供給拠点として機能し、都市の防災力とレジリエンスの向上に寄与する。

自由設計による蓄電ハウジング実証実験イメージ
コンクリートハウジング構造図

3. 戸建住宅向け蓄電ユニットの開発
 戸建住宅の床下に設置する専用蓄電ユニットを開発し、住宅ごとの再生可能エネルギーの蓄電と自家消費を可能にするモデルを構築する。東京都が推進する太陽光パネルの設置義務化により生まれる昼間の余剰電力を蓄え、夜間に活用することで、ノングリッド型の電力供給を都市部で実現する。これにより、各家庭が蓄電池を自ら保有・運用できるようになり、停電時にも照明や通信、空調など最低限の生活機能を維持できる。結果として、戸別に防災対応力(レジリエンス)を高めることとなり、都市全体の電力インフラの強靭化にもつながる。

戸建て住宅向け蓄電ユニット実証実験イメージ

 同社はこれら3つの開発事業を核として、「蓄電コンクリート」の早期社会実装へ向け研究開発を加速させていく。2025年9月25日には、蓄電コンクリート技術を使ったプロダクツの企画開発と全国的な普及体制の構築を目指す「蓄電コンクリート工業会」を設立する予定となっており、同社の研究開発の中核拠点「福島RDMセンター」(福島県浪江町)で開催する工業会の設立総会の場において標準蓄電モジュールの初号機を披露する予定。

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