アーカイブ情報

2026/3/10

【資源循環型まちづくり構想】ちとせ研究所、「廃棄物処理」を「原料生産」へ。生物変換技術を複合実装した「C-BED」パイロット拠点構築を山梨県北杜市で開始

 ちとせグループの中核法人であるちとせ研究所(以下、ちとせ)は、山梨県北杜市にて、未利用資源を活用した物質循環システムの社会実装を目指して実証を開始する。同プロジェクトは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「バイオものづくり革命推進事業※1」において採択を受けた270億円規模の事業の一部として実施するもの。ちとせは同市を、独自の資源循環型まちづくり構想である「CHITOSE Bio-Evolution District(以下、C-BED)」の第一歩となるパイロット拠点と位置づけ、未利用資源を活用し、物質やエネルギー、さらに経済が循環する新たな地域モデルの創出に取り組む。

※1 公募事業名:バイオものづくり革命推進事業
 この事業は、未利用資源の収集・原料化、微生物等の改変技術、生産・分離・精製・加工技術、社会実装に必要な制度や標準化等のバイオものづくりのバリューチェーン構築に必要となる技術開発及び実証を一貫して支援するもの。
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100246.html

テーマ名:下水汚泥等高含水有機廃棄物を資源化する炭素/窒素循環社会システム実証
事業期間:2024年度~2028年度(5年間)
事業概要:https://www.nedo.go.jp/content/800040183.pdf

生き物が支える次世代のまちづくり構想「C-BED」
 C-BEDは、排水や食品・木質などの残渣、家畜排泄物など、地域で生まれる様々な有機性の「廃棄物」に、生き物の力で新たな価値を与える次世代の循環型まちづくり構想。これらの廃棄物を「未利用資源」と捉え、農業やバイオものづくり※2の原料として供給することで、物質やエネルギーの循環のみならず、持続可能な土作りから生まれた高付加価値農産物の展開や、地域発の製品開発、雇用などの経済循環を生み、自立したまちづくりを推進する。

 従来、地域で発生する様々な廃棄物は、「完全に綺麗な状態で環境へ戻すこと」を目的に、公衆衛生や社会的責任の観点から人目を避けた場所で個別に処理されてきた。そして、処理が完了したものは地域内外で最終処分される構造であった。
 しかし、ちとせはC-BEDを通じ、これまで単なる社会的コストと捉えられていた「廃棄物」を、収益を生み出す「資源」へと再定義し、網羅的な循環システムを構築する。

 ちとせが提唱するのは、多段階の生物変換。地域から発生する廃棄物を炭素・窒素・リン・水・エネルギーといった要素レベルまで分解し、ある変換プロセスから生じた産物を、次のプロセスの原料として接続する。この連鎖によって、廃棄物を余すところなく原料として使いこなす。

 現在、世界的に「炭素(カーボン)」の循環が注視されているが、ちとせの考える循環はこれに留まらない。炭素に加え、生命の維持に不可欠な「窒素」や「リン」までを網羅した、より包括的な循環を目指している。具体的には、下水汚泥等に含まれるこれらの成分を生物変換技術によって効率的に回収し、再び地域の農業などへと供給し、生命の営みに即した資源循環を形にする。

 日々変動する天候や廃棄物の組成に対し、複数の生物変換技術を連携させ、循環を止めないためには、極めて高度な全体設計が求められる。ちとせは、データに基づき地域特性を精査し、これまで培ってきた高度なAI技術を用いてプロセスを最適に制御する。

 さらに、従来の「人目を避け、隠す処理」から脱却し、資源循環のプロセスを「地域の魅力として可視化して、魅せる」ことに挑戦。廃棄物は汚いもの、というこれまでの常識を塗り変えていく。そうすることで人々が集まり新たな賑わいを生む持続可能な次世代の拠点として、地域全体の価値向上にも寄与していく。

※2 生物由来の素材を用いてものづくりを行うこと、さらには微生物などの生物の能力を活用して有用化合物などを作り出すこと (引用元:国立研究開発法人産業技術総合研究所「バイオものづくりとは?」https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20230412.html

取り組みで実装する生物変換技術(一部)
※廃棄物処理については試験研究目的での実施を予定

・樽型堆肥化プラント
 ユニークな樽型デザインの堆肥化プラント。残渣や家畜排泄物が微生物の力で有機肥料になる過程をリアルタイムに可視化するモニターも備わり、誰もが生物変換を身近に学ぶことができる。

・有機養液栽培(環境調和型排水処理)
 通常は化学肥料を原料として行われる養液栽培(水耕栽培)において、微生物の力で有機物を分解し、植物の養分へと変換する技術。ちとせは、養液として排水を活用することで、排水処理と植物栽培を同時に実現する。農作物の生産に留まらず、地域の景観に調和する植物園のような形態での運営も予定。

・キノコ由来素材生産
 バイオガス生産の過程で生じる排水に未利用木質バイオマスを混合し、キノコ菌を育成する技術。化石資源由来の接着剤の代わりに菌糸を使用した建材や、ハイブランドも注目するサステナブルレザーを製造する。これまで廃棄されていた物質から高付加価値素材を生産し、巨大なグローバル市場へ供給する。

・生分解性バイオプラスチック(PHA※3)発酵・精製:食品残渣や下水汚泥を発酵させて生成した有機酸を原料に、PHAを作り出す菌を培養し、菌体内に同成分を蓄積。これらの菌を昆虫に与え、消化されずに残るPHAを回収する手法。さらに、育成した昆虫自体を家畜飼料や野菜栽培等のポリネーター(花粉を運ぶ昆虫)としても活用を予定。

・バイオガス生産:食品残渣や下水汚泥などの廃棄物を発酵させ、バイオガス(メタン)を生成する。生成したガスからエネルギーを作り出し、前述の循環設備群の運営に活用する。

※3 ポリヒドロキシアルカノエート


多層的な連携が支えるC-BED構想

 この壮大な循環型まちづくり構築は、一社単独で成し遂げられるものではない。今回のパイロット拠点が置かれる山梨県北杜市は、南アルプスや八ヶ岳を望む豊かな自然環境を活かした農業・畜産・林業が盛んであり、活用すべき未利用資源が豊富に存在する地域。ちとせは2020年に北杜市と包括連携協定を締結し、地場のパートナーである株式会社ファーマンと共に、持続可能な農業に取り組んできた。

 また、MATSURIに参画するプラントエンジニアリング、エネルギー、金融、物流などをはじめとする広範な業界のパートナー企業とも連携し、ちとせの生物変換技術と、各社の専門知見を掛け合わせることで初めて実現する。こうした協力関係を基盤に、ちとせは北杜市において、多種多様な生き物の力を活用した技術群を投入する。

資源と経済を地域で回す、循環型地域モデルを世界へ

C-BEDモデルが世界へ広がる、分散型社会のイメージ

 ちとせは、多様な生物変換技術を複合的に繋ぎ合わせ、そのプロセスを地域の魅力としてデザインすることで、新素材の製造、高付加価値農産物の展開などの「収益を生む事業」として継続させる循環型地域モデルを体系化していく。このC-BEDモデルは、山梨県北杜市のパイロット拠点を第一歩とし、2050年までに国内外100箇所への展開を計画している。こうしたモデルが各地に広がることで、見過ごされていた地域資源が価値へと生まれ変わり、新たな雇用や産業が生まれる。さらに、個々の生物変換技術をはじめ、循環全体の様子そのものが地域の新たな風景となり、持続可能な社会を象徴する場所として、地域外からも人々を惹きつける新たな流れを生み出す。

 同社がその先に見据えているのは、資源・人・経済が特定の都市に集中する社会から脱却し、地域ごとに資源循環を基盤とした経済活動が成立する分散型社会への移行。エネルギーや資源の多くを輸入に依存し、外部環境の変化に左右されやすい現代社会。その脆弱性を克服するためには、地域の中で資源と経済を循環させ、地方が自ら立ち上がる力を育むことが不可欠。山梨県北杜市から始まったこの取り組みを起点とし、ちとせは未利用資源を地域の誇りへと転換する。資源が循環する美しい景観を街のアイデンティティとし、訪れる人々を惹きつける魅力ある場をつくり出すことで、自立したまちづくりの新たなスタンダードを実装していく。

カテゴリー
コンバーティングニュース

PAGE TOP