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2025/12/23
【酸化ガリウム基板】ノベルクリスタルテクノロジー、NEDO事業で貴金属の使用量を大幅に削減した結晶育成法開発
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は経済安全保障を強化・推進する観点から支援対象とすべき先端的な重要技術の研究開発を進める「経済安全保障重要技術育成プログラム(通称“K Program”)」の一環として、「高出力・高効率なパワーデバイス/高周波デバイス向け材料技術開発」を実施している。
同事業で「β-Ga2O3ウエハ、パワーデバイス及びパワーモジュールの開発」に取り組むノベルクリスタルテクノロジーは、このたび、貴金属製のるつぼを使用しない結晶育成法の開発に成功した。この育成法は原料融液を液滴で供給する特徴からDrop-fed Growth(DG)法と命名された。
DG法は、従来用いられてきたEdge defined film-fed growth(EFG)法と比べ、非常に高価な貴金属であるイリジウムの使用量を大幅に削減できる。これにより、酸化ガリウム(β-Ga2O3)基板の製造コストを従来比10分の1にすることが可能。

背景
β-Ga2O3※1は、その優れた材料物性により低損失のパワーデバイス※2を作ることができ、家電、産業用機器、電気自動車などの中耐圧(数百V)市場や、鉄道車両、電力系統などの高耐圧(数kV)市場において必要とされるパワーエレクトロニクス機器への適用が期待されている。そのため、国内外においてβ-Ga2O3に関わる大型予算の国家プロジェクトがいくつも進められており、材料開発およびデバイス開発が盛んに行われている。
ノベルクリスタルテクノロジーは、2015年からEFG法によるβ-Ga2O3基板を製造してきた。しかし、原料の融点が約1800℃と高いため、EFG法では原料容器となるるつぼに高温などに耐えられる非常に高価な貴金属であるイリジウムを大量に使用する必要があり、低コスト化が難しい状況にあった。そこで同社は、イリジウム製のるつぼを用いない独自のβ-Ga2O3育成法の開発に取り組み、2024年度からは同事業にて、その開発を進めてきた。
今回の成果
加熱方式や原料供給方法を工夫することで、イリジウム製のるつぼを用いずに95mm径のβ-Ga2O3結晶を育成することに成功した。
誘導加熱※3により金属円筒を加熱し、加熱室内の温度を上昇させるにより、結晶(種結晶)の表面が加熱室の開口部からの輻射で加熱溶融される。この開口部の形状により、結晶表面の温度分布制御が容易になり、結晶径に合わせた最適な温度分布が実現しやすく大口径化が可能になる。また、原料融液を液滴で結晶表面に連続的に供給しながら結晶を下降させることで、これまで使用していたイリジウム製のるつぼを用いずに結晶育成ができる(図2)。

開発したDG法の特徴は以下の通り。
1.貴金属製のるつぼを使用しないため、イリジウムの使用量を大幅に削減可能
2.結晶育成面を加熱溶融するため、大口径化が容易
3.原料を連続供給するため、長尺結晶の製造が可能
図3にDG法で育成した95mm径のβ-Ga2O3結晶を示す。A部分が種結晶であり、その上のB部分が育成した結晶。結晶は円柱形状であり、結晶育成長は50mm。n型結晶になるように不純物を添加している。β-Ga2O3結晶はn型不純物のみを添加した場合、青色の結晶になる。育成した部分は濃い青色となっており、n型結晶であることが分かる。

(Aの部分は種結晶で、Bの部分が育成長を示す)
DG法では、貴金属イリジウムの使用量の大幅削減などにより、従来のEFG法よりもβ-Ga2O3基板の製造コストを10分の1に低減できると試算される。
なお、DG法は国内外で特許を出願し、権利化を進めている。
・日本:特許第7633637号(登録)、特開2025-061932(審査中)
・米国:US 11,725,299 B2(登録)、US 12,163,246 B2(登録)
・欧州:EP 3 945 147 A1(審査中)
・中国:CN 114000188 A(審査中)
今後の予定
ノベルクリスタルテクノロジーは、DG法の大口径化と結晶品質の向上に取り組み、2029年から150mm(6インチ)基板、2035年から200mm(8インチ)基板の出荷を予定している。
※1 β-Ga2O3
ガリウムと酸素の化合物で、ワイドギャップ半導体の1つ。
※2 パワーデバイス
高耐圧、高電流を制御することが可能な半導体素子のことで、インバーターなどの電力変換機器に用いられる。
※3 誘導加熱
結晶育成において、高周波の電流をコイルに流すことでできる磁界により、コイル内側に設置した金属性のるつぼなどに渦電流を生じさせて加熱する方式。
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