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2024/9/19
【電子伝導性炭素セメント材料】會澤高圧コンクリートの會澤祥弘社長、MITのEC³-Hub Inauguration Ceremonyで基調講演
米マサチューセッツ工科大学(MIT)は、米東部時間の2024年9月16日、電子伝導性炭素セメント材料「EC³」(electron-conducting carbon-cement material:日本名『蓄電コンクリート』)の社会実装プロジェクトのスタートを記念し、人類の発明品などを数多く集めるMITミュージアムを会場に開始式(EC³-Hub Inauguration Ceremony)を開催した。
同式典は、今年4月11日、MITと會澤高圧コンクリートが蓄電コンクリートの社会実装に向けた共同研究コンソーシアムを設立することで合意したのを受け、プロジェクトの本格始動を記念してMITの大学関係者を軸に、本技術に関心を寄せるグルーバル企業や政府関係者などを招く形で開催された。
参考:米MITと會澤高圧コンクリート『ec³コンソーシアム』を設立「蓄電コンクリート」の社会実装へ共同研究体制(2024年4月11日)
EC³-Hubの代表を務めるMIT土木環境工学部のフランツ・ヨーゼフ・ウルム教授が技術の概略説明を含めて開式の挨拶をした後、會澤高圧コンクリートの會澤祥弘社長がおよそ30分間にわたり基調講演(キーノート)を行った。
コンクリートに様々なテクノロジーを掛け算して素材の新たな価値を生み出す経営手法を紹介したうえで、「再生可能エネルギーの普及に欠かせない蓄電池開発に世界がしのぎを削るなか、当社の変わらぬ祖業であるコンクリートが蓄電体に進化する可能性を目の前にして、傍観するという選択肢はあり得なかった」と強調、EC³-Hubをベースとする蓄電コンクリートの社会実装を決意した理由を明らかにした。
そのうえで「MIT研究者たちのハイレベルな実証工学とAIZAWAの量産ノウハウの確かな蓄積を経て、近い将来、本技術は大輪の花を咲かせるだろう」と抱負を述べた。
キーノートの後、EC³-Hubの共同ダイレクターを務めるアドミール・マシック准教授が本技術のポテンシャルを解説し、リサーチサイエンティストのジェームズ・ウィーバー氏が技術の詳細を説明した。
式典には、在ボストン日本国総領事館の箕谷優首席領事をはじめ、北米三菱商事ボストン支店長ら日本企業の駐米代表らが参加したほか、フランスの大手建設会社ブイグ、モンゴルのセメント最大手MAKの関係者らおよそ60名が出席。式典の模様はMIT関係者らを対象にリモートでも配信された。
■蓄電コンクリートについて
蓄電コンクリート(ec3コンクリート:electron conducting carbon-cement based)は、カーボンブラックと呼ばれる炭素の微粒子をコンクリートに添加することで、電気をコンクリート内部に蓄える機能を持たせることを可能にする。
このカーボンブラックは水に対する親和性が低い疎水性の物質であるため、コンクリート内部で起こる水和反応においてはセメントペーストとして取り込まれず、水和反応には寄与しないがワーカビリティの確保に必要な余分な水分とともにセメントペースト内に無数に存在する細孔内に固定されることで、ワイヤー状の構造を形成する。
このワイヤー状のカーボンブラックは幾何学的な構造をしており、毛細血管のように繋がり合うことで、コンクリート内で非常に大きな表面積を形成する。そして、このコンクリートは電解質溶液に浸漬されると、カーボンブラックの周囲に電子が集まり電気を蓄積する。
これらの材料で作られた蓄電コンクリートによる2つの電極が絶縁体で分離され、それぞれの電極に多くの電子が蓄積することで、非常に強力なスーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサ)を形成することがMITの研究によって発見された。
一般の電池は中に含まれる化学物質が起こす化学反応によって化学エネルギーを電気エネルギーに変換して貯蔵するが、この化学反応を繰り返し起こすことによって容量劣化が発生し、蓄電能力が低下してしまうことがデメリットであった。しかし、蓄電コンクリートはそのような化学反応を必要とせず、電極間を電子が移動するだけであるため、長期的な活用も期待することができる。
この長期的な活用が可能という特徴から、建物やインフラに使用しても定期的なメンテナンスを不要にすることが期待できるため、生活に必要な電気を太陽光や風力由来で貯蔵し、必要に応じて使用することができることから、再エネとしての電力を効率的に利用する新たな脱炭素社会の実現に向けた解決策として期待できる。
また、フランツ・ヨーゼフ・ウルム教授を始めとしたMITの研究者らは、戸建て住宅のコンクリート基礎に用いることで、コストをほとんど変えずに丸1日分の電気エネルギーを蓄えることが出来ると試算しており、日本国内でも広がる太陽光発電などによる再エネ由来のエネルギーを使用し、自宅で活用できるモデルを実現することができれば、送電線を必要としないエネルギーシステムを実現させることも期待される。
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