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2024/1/27

【電波制御シート】マルアイ、5G/Sub6帯で特定周波数の電波を反射・吸収・透過可能に。「nano tech 2024」で展示

 マルアイは、第5世代移動通信システム(5G)で利用されているミリ波帯とSub6帯において、特定の周波数の電波を反射・吸収・透過できる電波制御シート「周波数選択性電波反射シート」「周波数選択型電波吸収シート」「超狭帯域型電波吸収シート」を開発した。いずれも、東京都市大学との産学連携により開発した。これらの開発品は、2024年1月31日~2月2日まで東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2024 第23回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」の同社ブース(ブース番号: 5T-13)にて展示する。

開発の背景
 近年、超高速・超低遅延・多数同時接続が可能な5G/6Gに対応した通信機器やWi-FiやBluetoothを用いたスマート家電、ローカル5Gを導入したスマート工場、ミリ波レーダーを活用した自動運転など、様々な無線通信技術を用いた製品やサービスが普及し暮らしを便利にしている。その一方で、これらの複数の電波が互いに干渉することで、通信速度の低下や周辺機器の誤作動の発生や、通信エリアからの電波漏洩により盗聴や不正アクセスの被害などセキュリティ上のリスクも懸念されている。これらの問題を防ぐためには、特定の周波数の電波を選択的に反射・吸収・透過する電波制御シートを製品や機器に設置する必要がある。
 通信業界では安心安全で快適な通信環境を実現するために、電波制御シートの開発が進んでいるが、現在普及している電波制御シートは、金属板や金属酸化物を多量に含有した樹脂などが用いられているため非常に高重量。また、数mm以上の厚みがあり容易に加工できず設置箇所が限られていた。そのため、5G関連機器や自動車レーダー機器の周辺に設置する場合は、機械設計が大きく制限されることが課題となっていた。また、製品価格や設置費用が高く手軽に使用できないことも難点とされていた。
 そこでマルアイは、独自開発した導電インキと長年培った高度な印刷技術を活用し、新たな電波制御シートを開発した。開発品は低コストかつ従来品と比べて軽量薄型で高いフレキシブル性を有しているため、様々な場所に容易に設置できる。

開発品の特徴
 開発品は5Gのミリ波帯とSub6帯において、特定の周波数の電波のみを選択的に反射・吸収・透過できる電波制御シート。いずれも軽量薄型のためオフィスや工場の天井などにも容易に設置可能で、5G関連機器やIoT機器の安定した通信環境の実現や電波漏洩の低減に貢献する。また、ミリ波関連機器の設計の自由度を妨げることなく誤作動や電波障害を解決でき、快適な高速無線通信環境の構築に寄与する。
(1)周波数選択性電波反射シート
 5Gのミリ波帯とSub6帯において、特定の周波数の電波のみを選択的に反射または透過できるシート。厚み1mm以下の軽量薄型でありながら、高度な周波数選択性能と電波反射性能を有す。対応周波数は、使用用途に合わせて印刷パターンを変えることで、任意に調整できる(適応範囲目安:1GHz~30GHz、※1)。また、製造にはグラビア印刷技術等を活用することにより、将来的に低コストで広い面積をカバーする大判のシートの供給が可能。
周波数選択性電波反射シートの例
周波数選択性電波反射シートの例

(2)周波数選択型電波吸収シート
 5Gのミリ波帯とSub6帯において、特定の周波数の電波のみを選択的に吸収できるシート。20dB(99%)以上の高い電波吸収性能を有す。抵抗膜、誘電体層、反射膜からなる3層構造で、抵抗膜には同社が独自開発したCNT(カーボンナノチューブ)を高分散させた高導電性インキを印刷している。金属酸化物を含有した従来品とは異なる製造方法や構造にすることで、大幅な軽量薄型化を実現した。対応周波数はシートの厚みを変えることにより、任意に調整できる(適応範囲目安:3GHz~50GHz、※1)。
周波数選択型電波吸収シートの例
周波数選択型電波吸収シートの例

(3)超狭帯域型電波吸収シート
 5Gのミリ波帯とSub6帯において、特定の周波数の電波のみを選択的に、超狭帯域で吸収できるシート。厚み1mm以下の軽量薄型でありながら高度な周波数選択性能と20dB(99%)以上の高い電波吸収性能を有す。対応周波数は、使用用途に合わせてパッチ設計やシートの厚みを変えることで、任意に調整できる(適応範囲目安:2GHz~50GHz、※1)。製造にはグラビア印刷技術等を活用することにより、将来的に低コストで広い面積をカバーする大判のシートの供給が可能。
超狭帯域型電波吸収シートの例
超狭帯域型電波吸収シートの例

※1:対応周波数は、対象物・仕様等により範囲が限定あるいは拡張される場合がある。

今後の展望
 開発品の製品化は2025年頃を目標にしている。今後はスマートフォンや家電、高速道路などのインフラ、オフィスビルや工場などの建物への活用も視野に入れながら具体的な用途展開を行っていく。また、様々な環境での実証実験および顧客へのヒアリング等を行い実用性や機能性を高めていく。

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