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2024/12/16
【風力発電機】日本精工、主軸用高信頼性自動調心ころ軸受開発
日本精工(NSK)は、長寿命材料「Super-TF」と高硬度被膜「DLC被膜」に加え、高負荷容量化を実現する新開発の「新形式保持器(ECAタイプ)」という3つの対策技術を適用した「風力発電機主軸用高信頼性自動調心ころ軸受*1」を開発し、グローバルで販売を開始した。
同製品の特長は、優れた耐摩耗性であり、標準品に対して軌道面の摩耗量を1/10以下に低減した。風力発電機主軸用自動調心ころ軸受の主な損傷形態である、軌道面の摩耗を低減し、軸受の耐久性を大幅に向上させた。同製品は、風力発電機のメンテナンス頻度低減や、部品交換に伴うダウンタイム(稼働停止期間)の削減などを通じて、安定稼働に貢献する。
NSKはこれまで、3つの対策技術のうち、長寿命材料「Super-TF」、高硬度被膜「DLC被膜」を適用した製品を販売してきた。2024 年6月に、「新形式保持器(ECAタイプ)」を適用した製品を新しく開発し、3つの対策技術をすべて適用した製品を販売する体制が整った。本製品の、「新形式保持器(ECAタイプ)」を採用した製品は、既に北米の風力発電事業者での採用が決定している。
今後、同製品と併せて状態監視ソリューションを顧客に提案し、風力発電機の補修市場向けビジネスを拡大し、「中期経営計画2026」で、アフターマーケットビジネスの売上高を2021年度比+250億円という目標を目指す。
*1 自動調心ころ軸受:2列の軌道をもつ内輪と、軌道が球面の外輪との間に、転動面がたる形のころを組込んだ軸受
開発の背景
風力発電機では、搭載部品が故障した場合、高額な修理コストが発生するだけでな<、長期のダウンタイムが発生する。これは、風力発電機が山上や洋上などの特殊環境に設置されているために、部品交換の作業期時間が長いこと、また、大型クレーンなど部品交換用設備の調達リードタイムが長いことなどが主な原因とされる。また、大型部品は受注生産で調達リードタイムが長<、特に、搭載部品の中でサイズが大きい主軸や軸受の場合は、損傷が発生すると約1年間のダウンタイムが発生するというデータもある*2。そのため風力発電機主軸用軸受の市場では、早期損傷*3を抑制する高信頼性が求められている。
*2 出典:デロイトトーマツコンサルティング合同会社『平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査風力発電業界の構造調査最終報告書』
*3 早期損傷:顧客の想定よりも早い損傷
風力発電機主軸用の軸受には、ブレード(羽根)の大きい重量や風による変動荷重を支える役割があり、高負荷容量で調心性*4が高い、自動調心ころ軸受が一般的に使用される。自動調心ころ軸受が早期損傷する主な原因は、軸受の軌道面の摩耗によるものであり、この摩耗は、過酷な使用環境下で想定以上の重荷重を受けた際に軸受のころと外輪・内輪の間で潤滑機能を果たしている油膜形成が不足するため発生する。市場から求められている高信頼性の実現のためには、軌道面の耐摩耗性の向上が不可欠。
*4 調心性:取付誤差の許容能力が広<、軸やハウジングにたわみ等が発生すると自動的調整する性質
製品の特長と効果
(1)製品の特長:耐摩耗性の向上
軸受軌道面の摩耗量を、標準品に対して1/10以下に低減。風力発電機主軸用自動調心ころ軸受の主な損傷形態である軌道面の摩耗を低減、軸受の耐久性を大幅に向上させた。
(2)製品の効果
風力発電機のメンテナンス頻度低減や、部品交換によるダウンタイムの削減などを通じて、安定稼働に貢献する。
製品に取り入れた3つの技術
NSKのコア技術(材料技術、トライボロジー、解析技術)を活用した3つの対策技術により、軌道面の耐摩耗性を向上させた。今回、対策技術③を新開発し、既存の対策技術①②と組み合わせた。この3つの技術を組み合わせた製品は、NSKで初めて。
対策技術①長寿命材料「Super-TF」の採用(NSKコア技術:材料技術)
「Super-TF」とは、NSKが独自に開発した、材料の微細炭化物を均一分散させることで表面強度を向上させた長寿命材料。「Super-TF」を本製品の外輪と内輪に採用することで、軸受軌道面の耐摩耗性を向上させた。硬度はHv750。
対策技術②高硬度被膜「DLC*5被膜」の採用(NSKコア技術:トライボロジー)
DLC被膜とは、ダイヤモンドと黒鉛の結合構造を併せ持つ炭素が主成分の物質から作られた、薄膜の総称。高硬度な「DLC被膜」を採用し、本製品のころに適用することで、ころの表面性状劣化を防止。その結果、ころと接触する軸受の軌道面の耐摩耗性を向上させました。DLC被膜の硬度はHv1000。
対策技術③高負荷容量化を実現する「新形式保持器(ECAタイプ*6)」の開発(NSKコア技術:解析技術)
案内輪を廃止した形状の保持器を新開発し、本製品に採用することで、ころのサイズアップおよびころ数の増加を実現。これら内部設計の最適化により、軸受の高負荷容量化を実現し、軌道面の耐摩耗性を向上させた。
*6 ECAタイプ:保持器の形状タイプの一種で、案内輪を廃止した形状の保持器を指す
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