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2026/3/25

【高分子構造解析】東レリサーチセンター、リサイクルプラスチックの品質安定化を支える高分子構造解析サービスを開始

 東レリサーチセンター(TRC)は、プラスチック材料の分子量および分子構造を高精度に評価できるマルチ検出器ゲル浸透クロマトグラフ装置※1(MD-GPC)を新たに導入し、リサイクルプラスチックの品質評価を支援する高分子構造解析サービスを開始した。

 同サービスでは、プラスチック材料を構成する分子の「長さ(分子量)」や「枝分かれ構造(分岐構造)」※2を詳細に解析することにより、リサイクル材料に特有の強度や耐久性、加工性のばらつきや劣化状態を分子レベルで把握することが可能。特に、繊維、フィルム、成形材料として広く使用されるポリエステルやポリアミドなどの評価に有効。

 これにより、リサイクル材料を使用した場合でも、安定した加工性と製品品質を両立する材料設計・製品開発につなげることができる。TRCは、分子量および分岐度評価に関する長年の知見を活かし、リサイクル条件や成形条件の最適化を通じて、安定した物性を有する製品開発を支援する。

 プラスチック廃棄物の削減に向け、使用済みプラスチックを再利用するリサイクル技術への期待が高まっている。一方で、回収されたプラスチックは、使用中の熱・水分・紫外線による劣化や、リサイクル工程における加熱・再溶融などの影響を受けており、新品材料と同等の性能を安定して得ることが難しいという課題がある。特に問題となるのが、外観からは判断できない分子構造の変化。

 プラスチックの性質は、分子がどの程度の長さでつながっているか(分子量)、その分布(分子量分布)※3、および分子が直線状か枝分かれしているか(分岐構造)によって大きく左右される。例えば、リサイクル工程で分子量が低下すると、溶融粘度が低下して成型時の寸法安定性が損なわれたり、機械強度や耐久性が低下したりすることがある。一方、鎖延長剤※4を用いて分子を再結合させることで分子量を回復・増加させることは可能であるが、条件によっては新たな分岐構造が形成され、溶融粘度や成形品の強度に影響を及ぼす場合がある。そのため、分子量と分岐構造の両方を正確に評価することが、リサイクル材料の品質安定化には不可欠。

 MD-GPCでは、複数の検出器を組み合わせることにより、分子量分布および分岐度の定量評価が可能。標準試料に依存しない絶対分子量の測定に加え、分岐構造の違いを把握することで、リサイクル条件や熱履歴の違いが材料に与える影響、鎖延長剤の添加量や処理条件の最適範囲を定量的に評価することが可能となる。

 一例として、熱処理や鎖延長剤添加がポリエステルの分子構造に及ぼす影響を評価した。その結果、熱処理では平均分子量が低下し、ポリエステルの分解が起きていると推察された。一方、鎖延長剤添加によって分子量が新品(バージン材)以上に増加することが確認された(左図)。さらに、分子量と分岐構造の関係を解析したところ、分岐度は分子量に依存せず一定であることが分かった(右図)。

 このように、分子量と分岐度を定量的に把握することで、加工性と機械強度を両立するための条件設計に役立つ知見が得られる。

図 (左)熱処理前後のポリエステルの平均分子量。(右)鎖延長剤を添加して加熱処理したポリエステルの分岐度と分子量の関係。ピンク丸内は高分子鎖の模式図

 同サービスは、例えば、以下の研究・技術開発において、リサイクル材料の設計、プロセス最適化、量産時の品質安定化に貢献する。
・リサイクル原料を用いた包装材料・フィルム
・繊維・不織布などのサステナブル素材開発
・自動車・家電用途の成形材料
・バイオマス・再生材料を活用した高付加価値材料

 TRCは今後も、「高度な技術で社会に貢献する」という基本理念に基づき、分析・解析技術の高度化と最先端分析技術の開発に取り組み、顧客の材料開発や課題解決を支援するとともに、サステナブル社会の実現に貢献していく。


※1 マルチ検出器ゲル浸透クロマトグラフ装置: ゲル浸透クロマトグラフ(GPC: Gel Permeation Chromatography) は高分子の「大きさ(分子量)」の違いを利用して分離・測定する手法。試料を溶液にして細かい孔(あな)を持つカラムに流すと、分子量の大きいものほど早く、小さいものほど遅く通過する。この分離機構から、GPCはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC: Size Exclusion Chromatography)と総称される。GPC-TDAは、マルチ検出器ゲル浸透クロマトグラフ装置(Multi Detector-GPC)の1つであり、光散乱検出器、粘度検出器、屈折率検出器、と異なる3つの検出器(TDA:Triple Detector Array)を使用する。これにより、標準試料に頼らず、実際の分子構造に基づいた分子量(絶対分子量)や分子の広がり方、枝分かれの程度まで評価することが可能である。

※2 分岐構造: 高分子の主鎖から枝のように分子が分かれて伸びた構造のことを指す。分岐の有無や多さによって、加熱成型時の材料の流れやすさ、強度、耐久性などが変化する。分岐構造には、星型、櫛型、ランダム型などさまざまな形がある。

※3 分子量分布: 高分子材料は、長さ(分子量)がすべて同じ分子でできているわけではなく、長い分子と短い分子が混ざった状態になっている。そのため、分子量は「平均値」で表される。また、どの程度ばらつきがあるかを示したものが分子量分布であり、材料の加工性や製品の安定性に大きく影響する。

※4 鎖延長剤: 低分子量の反応性化合物であり、高分子鎖同士を化学的に結合させ、分子量を増加させる添加剤。リサイクル工程などで短くなった分子鎖を結合させ、分子量を回復・増加させる目的で使用される。

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