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2025/11/20

【3Dプリント】築・ONOCOM、2階建て住宅プロジェクト、建築確認・完了検査・販売まで達成

 2025年11月7日、築(KIZUKI)ONOCOMは、宮城県栗原市にて日本初となる2階建て3Dプリンター住宅の建設を完了。建設・材料・機械・技術など、国内外20社以上の協賛・協力企業が技術を結集して実現した。

※:日本国内で建築確認を取得し、完了検査を経て販売まで完了した2階建て3Dプリンター住宅としては日本初(自社調べ/建築確認申請・完了検査・販売実績を基準、調査年月:2025年11月)

建設業界が抱える労働人口の減少と職人技術の継承
 日本の建設業界は、熟練職人の高齢化と深刻な人手不足という課題に直面している。3DCP工法は、工期の短縮やコスト面において、建設業界の新たな選択肢として注目されているが、建築基準の観点から国内での建設事例は主に「平屋」に限られ、活用が制限されていた。同プロジェクトでは、地元の職人や多くの企業と共に新旧の技術を結集させて課題に挑戦した。

国内初となる3Dプリンター(3DCP)による多層階施工
 これまでの国内3Dプリンター建築では不可能だった多層階構造の建築を完了した。従来の3DCP建築は、主に平屋や小規模構造に限定されてきた。しかし今回の事例は、構造の強度、設計の自由度、安全性という多層階ならではのハードルをすべて突破し、3DCP建築の新たな地平を切り拓くものだ。

構造とデザインと機能が、ひとつの壁から同時に生まれる未来の建築
 同プロジェクトは、日本で初めて3DCPによって「基礎から2階建て構造体まで」を現場で一体印刷した住宅だ。従来、基礎・構造・仕上げは別工程で複数業者が分業してきたが、本事例ではそれらをRC・鉄筋を除く大部分の工程を1台の3Dプリンターで、一貫施工した。

 内装には樹脂系3Dプリンターによるキッチン(Spacewasp社)、インテリア(積彩社)を採用し、「テクノロジー×デザイン」が一体となった先端技術との融合を確立した。

 材料はタイの大手建材メーカーSCG(Siam Cement Group社)が開発した3Dプリント専用モルタル材料を採用した。日本の建築基準や気候条件に合わせた調整を行い、大型3Dプリンターと組み合わせることで、精度と安全性の両立を実現している。さらに、壁は意匠デザイン・構造フレーム・設備スペースが一体化した三層構造をワンステップで成形した。この「多機能壁」の一括施工により、現場の工程が激減し、設備配管の自由度が向上、施工ミスやバラつきも最小限に抑制されている。

キッチン(Spacewasp社)
インテリア(積彩社)

技術の特徴と成果(既存3DCPと比較した新規性)

同プロジェクトの将来性
 日本では多くの住宅が2階建であることから、将来的に量産環境が整えば価格が下がり、消費者にもメリットがあるといえる。同取り組みにより、先端技術(※2)が一棟に集約され、居住者のニーズに応えながら、コスト削減と高い再現性を同時に実現できるようになった。一度モデルを作り込めば、従来のように専門家チームが毎回詳細設計をやり直す必要がなく、同品質の構造を効率的に複製することが可能となる。

各社が目指す3DCPの未来
築KIZUKI
 「競争から共創へ」今回の住宅建設で得た知見をもとに、3Dプリンティング技術を土木構造物、防災・防衛インフラ、災害復興分野へと応用していく方針だ。施工教育プログラムやデジタル施工管理システムを開発し、持続可能な建設産業モデルの確立を目指している。
 建設を“印刷する”時代が、いよいよ現実になった。この技術を軸に、日本から世界へ、次の建設モデルを発信していく所存だ。フィリピンにおいてはONOCOM社と連携を組み技術開発を行う。

築 五十嵐理香(代表取締役)

ONOCOM
 ADC推進室(Advanced Design & Construction)を立ち上げ、3Dコンクリートプリンティング(3DCP)事業を本格化させている。
 国内では2階建て住宅の建設に着手し、技術確立を目指す一方、フィリピンでの社会課題解決を目指している。
 COBOD社の3Dコンクリートプリンター「BOD3」をフィリピンに導入し、現地で手に入るコンクリートを活用することで、年間70万〜90万棟不足している住宅問題の解決に貢献する。
 将来的には、商業施設の印刷といった大規模な建築プロジェクトや、コンクリート以外の樹脂素材を用いたインテリア製造など、建築の枠を超えた幅広い部分で3Dプリンタ技術等の先端技術の可能性を追求していく。

オノコム 那須 貴寛(General Manager)

建築概要
建物名:Stealth House
所在地:宮城県栗原市
建築主:個人
主な用途:一戸建て住宅
設計期間:2024年9月-12月
工期:2025年3月-11月完成
敷地面積:344.81㎡
延べ面積:49.92㎡ (1F:30.52㎡ , 2F:19.40㎡)
最高高さ:約6.3m
担当:
3DCPプリンタ機械・施工・オペレーション: 株式会社 築/ 五十嵐
設計・監理・施工: 株式会社 オノコム/ 那須
設計・ジオメトリエンジニアリング・ビジュアライゼーション: ZKIdesign/ 塩月
構造設計・監理: 株式会社構造計画研究所/ 後藤・朴
意匠+設備3D詳細検討・設計 技術協力: 白矩/ 押山・高橋・梅田
共同研究大学: 東京都立大学/ 國枝・名島

同プロジェクトに参画した主な企業(順不同)
 LIXIL, 山口産業, 昭和化学工業, 積水化成品工業、シーカ・ジャパン, フォンテトレーディング, 積彩, Spacewasp, ウインテック, JFDエンジニアリング, キナン, レンタルのニッケン, セーファ, Studio55, CUPIX, SCG etc. ほか20社。

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