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2025/6/3
【ENERGY】京都フュージョニアリングとフジクラ、英国原子力公社のHTSマグネット領域の研究推進プロジェクト(第一ステージ)完遂

京都フュージョニアリングとフジクラは、英国原子力公社(UKAEA)より受注した、同社子会社の英国インダストリアル・フュージョン・ソリューションズ(UKIFS)が主導する「STEP(Spherical Tokamak for Energy Production)」の開発に向けたフュージョンエネルギー(核融合)炉用高温超電導マグネット(HTSマグネット)領域の研究推進プロジェクトの第一ステージを完遂したことを明らかにした。
同プロジェクトは、STEPに組み込まれるHTSマグネットを設計・解析・製造する上で必要となるHTSコイルの交流損失をはじめとした様々な実データの取得、また同データを活用したマグネットデザインの高度化を主な目的としている。これを達成するべく、フュージョンプラントのエンジニアリングにノウハウを持つ京都フュージョニアリングと、HTS線材領域で世界有数の技術力を誇るフジクラが協業し、プロジェクトを推進した。
まずは基礎データを取得するための試作品コイルの製造から着手。HTSマグネットの物理特性や形状を考慮しつつ、 UKIFSと協議しながらコイルのスペックや構造などの基本設計、試験内容等を決めたのち、フジクラにて部品の製造や組み立てを行い、内部構造の異なる7種類の試作品コイルを完成させた。
並行して、実際に試験データを取得するための環境整備に向けて、試作品コイルのパラメーターを考慮した試験環境を構築したのち、製造した7種類の試作品コイルを用いた試験を行った。極低温下で得られた試験結果を分析した結果、フジクラの製造したHTS線材の基礎特性を用いて京都フュージョニアリングが計算予測した通電特性と、実際の試験結果とが一致することを確認した。これは、HTS線材の超電導特性を劣化させることなくコイル化できたことを示すとともに、取得した交流損失などの試験データの健全性を示している。
最終的に、同プロジェクトを通じて取得した基礎データをUKIFSに納品するとともに、基礎データ取得のために製造した試作品コイルの設計から製造工程までをUKIFSと伴走することで、HTSコイルの製造方法に関する知見を共有し、プロジェクトの第一ステージを完遂した。

■プロジェクトメンバーからのコメント
英国インダストリアル・フュージョン・ソリューションズ(UKIFS)のPrincipal Magnets Engineer, Dr. Stuart Wimbush
「本プロジェクトの成果には非常に満足しており、20か月にわたる契約期間を通じて得られた価値は大変大きなものでした。強固な協力体制のもと、積極的にプロジェクトを進めてもらえたことに加え、我々の複数のチームメンバーがプロジェクトに参加できたことにより、チームにとっても有益な機会となりました。プロジェクトの各段階で提供された成果物の品質は、いずれも素晴らしいもので、また、京都フュージョニアリングによる的確な支援により、HTS分野のリーディングカンパニーであるフジクラをはじめとする日本の産業界との幅広い接点を得られたことも、本契約の大きな付加価値です」
京都フュージョニアリングの岩井貞憲氏、西村美紀氏
「英国の先進的なプログラムに貢献できましたことを、大変光栄に思っております。HTSマグネット分野での受注は、当社にとっても初めての経験でしたが、HTS線材のエキスパートであるフジクラ様と協業させていただいたことで、無事にプロジェクトを完遂することができました。両社それぞれの強みを活かしながら、ともに取り組めましたことに、心より感謝申し上げます」
フジクラの藤田真司氏、大保雅載氏
「今回は、フュージョンエネルギー(核融合)炉分野で知見の深い京都フュージョニアリング殿と協業する機会を得て英国の先進的なプログラムに関われたことを大変光栄に考えております。高温超電導(HTS)マグネット分野でのフュージョンエネルギーの観点からの知見が深まったと共に無事にプロジェクトを完遂することができましたことを大変嬉しく思います。今後もHTS分野において国内外で貢献できるよう励んでいきたいと考えております」
*英国の「STEP」プログラムは現在、UKAEAの子会社で、2024年に設立された英国インダストリアル・フュージョン・ソリューションズ(UK Industrial Fusion Solutions Ltd. / UKIFS)が主体として実行し、商業的なフュージョンエネルギーの実現を目指している。
■フュージョンエネルギー業界におけるHTSマグネットの重要性
フュージョンエネルギー界における超電導技術については、国際プロジェクトとして進められているITERの世界最高峰の技術蓄積をはじめ、各研究機関や企業による研究開発が長きにわたり進められてきた。とりわけ日本の貢献度は高く、その背景には線材製作やマグネットの組み立て支持構造などにおいて世界でも有数の技術力を持つ量子科学技術研究開発機構(QST)等の研究機関や 日系メーカーの存在がある。
一方、近年民間のフュージョンスタートアップを中心に、フュージョンエネルギーの早期実用化と商業化の機運が高まっている。その中で「ITERの設計研究を基盤に、より臨界磁場の高いHTSマグネットを用いれば、より小型に、かつ短期間で同等のプラズマ性能が期待できる」という考えのもと、HTSマグネットは 革新的技術領域の1つとして、多くのフュージョンエネルギー関連企業によってハイレベルな開発が進められており、需要が高まっている。
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