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2024/10/31

【EUVレジストとEUV現像液】富士フイルム、先端半導体の製造プロセスに用いられるネガ型の極端紫外線向け材料の販売開始。静岡・韓国平澤拠点で生産能力増強

 富士フイルムは、先端半導体の製造プロセスに用いられるネガ型の極端紫外線(EUV)*1向けフォトレジスト(以下、EUVレジスト)および現像液(以下、EUV現像液)の販売を開始した。
 同社は、現在広く普及しているネガ型レジストの現像工程であるNTIプロセス*2を世界で初めて開発・実用化し、ArF露光*3を用いた半導体の微細化をリードしてきた。今回、EUV向けに進化させたNTIプロセスに対応するEUVレジストとEUV現像液を組み合わせて提供することで、回路パターンの形成プロセスを最適化し、さらなる微細化に貢献する。
 EUVレジストとEUV現像液の販売開始に伴って、静岡と韓国平澤拠点に新たにEUVレジストおよびEUV現像液の生産・品質評価の設備を増強する。
 5G/6Gによる通信の高速・大容量化、自動運転の拡大、AIやメタバースの普及などを背景に、半導体のさらなる需要拡大と高性能化が見込まれている。半導体の高性能化に必要な半導体回路の微細化を実現する技術として、光源に非常に短い波長の光を用いてウエハーに微細な回路パターンの描写が可能なEUV露光技術への注目が高まっている。今後、EUV露光技術を用いた製造プロセスの普及に伴い、同製造プロセスで使用される基幹材料であるEUVレジストの市場は、年率約2割で成長*4すると予測されている。また、EUV現像液の市場も同様に拡大が見込まれている。
 富士フイルムは、有機溶剤を用いて従来よりもシャープで微細な回路パターンの形成が可能なNTI現像液*5をArF露光のほか、EUV向けにも提供している。NTI現像液は、従来のアルカリ現像液にかえて高純度有機溶剤を用いることで現像時のレジストの膨潤を抑え、高いパターニング精度を実現。同社が他社に先駆けて独自に開発し、現在広く普及しているNTIプロセスで標準的に使用され、回路パターンの微細化に貢献している。
 今回、富士フイルムは、EUV露光技術を用いた製造プロセスに求められる回路パターンの微細化を実現するネガ型のEUVレジストの販売を開始した。同社が従来のフォトレジストなどの開発で培った機能性分子技術を活用して、レジストの反応制御機能を持つ光分解性クエンチャー連結型光酸発生剤(PCP)*6を導入。EUV露光時のレジスト膜中の酸濃度を均一に保つことで、従来の化学増幅型レジストの課題であった回路パターンのばらつきを約17%低減*7させることに成功した。
 さらに、独自のEUV現像液の販売も開始。有機溶剤の処方を工夫することで、独自のNTI現像液をEUV向けに進化させた。現像時のレジストの膨潤を極限まで抑え、回路パターンのさらなる微細化に貢献する。
 EUVレジストおよびEUV現像液の販売開始に伴い、設備投資を実施する。静岡拠点では、EUVレジストの生産・品質評価機能を強化するために、最新鋭の生産設備・検査装置を導入する。韓国の平澤拠点では、EUVレジストおよびEUV現像液の生産・品質評価機能を強化するために、クリーンルームを設置するとともに、最新鋭の生産設備・検査装置を導入する。両拠点に導入する設備の稼働開始時期は、2025年10月を予定している。
 富士フイルムは、フォトレジスト*8やフォトリソ周辺材料*9、CMPスラリー*10、ポストCMPクリーナー*11、薄膜形成材*12、ポリイミド*13、高純度プロセスケミカル*14の半導体製造の前工程から後工程までのプロセス材料や、イメージセンサー用カラーフィルター材料をはじめとしたWave Control Mosaic(ウエイブ コントロール モザイク)™*15をグローバルに展開。最先端から非先端まで半導体製造プロセスのほぼ全域をカバーする豊富な製品ラインアップに加え、日米欧アジアの主要国に製造拠点を有する安定供給体制や高い研究開発力を生かしたワンストップソリューションの提供により、顧客の課題解決に取り組み、半導体産業の発展に貢献していく。
<設備投資の概要>
静岡拠点
1.場所:静岡県榛原郡吉田町川尻
2.投資内容:EUVレジストの生産・品質評価機能強化のための生産設備・検査装置の導入
3.稼働開始時期:2025年10月
韓国平澤拠点
1.場所:大韓民国京畿道平澤市(梧城(オソン)工業団地)
2.投資内容:EUVレジストおよびEUV現像液の生産・品質評価機能強化のためのクリーンルーム設置、生産設備・検査装置の導入
3.稼働開始時期:2025年10月
*1 極端紫外線を用い、10ナノメートルより微細な世代に必要とされる最先端リソグラフィ技術。
*2 Negative Tone Imaging プロセス。露光後に感光しなかった部分を現像液で除去して回路を作るネガ型の現像工程。
*3 ArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザー光(波長193ナノメートル)を用いる露光手法で、現在最も普及している先端リソグラフィ技術。
*4 出典:富士キメラ総研「2023 先端/注目半導体関連市場の現状と将来展望」より。
*5 Negative Tone Imaging現像液。露光後に感光しなかった部分を現像液で除去して回路を作るネガ型の現像工程で使用される。
*6 PAG Connected PDQ(Photo Decomposable Quencher:光分解性クエンチャー)の略。光酸発生剤(PAG)とクエンチャーを偏りなく分散させるために、光酸発生剤(PAG)とクエンチャーを結合させた機能性材料。
*7 回路パターンのゆらぎの指標となるLWR(Line Width Roughness)を、PCPを用いない場合と比べて約17%低減させた。当社調べ。
*8 半導体製造の工程で、回路パターンの描画を行う際にウエハー上に塗布する材料。
*9 半導体製造のフォトリソ工程で使用する現像液やクリーナーなど。
*10 硬さの異なる配線や絶縁膜が混在する半導体表面を均一に平坦化する研磨剤。CMPは、Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略。
*11 CMPスラリーによる研磨後に、金属表面を保護しながら、粒子、微量金属および有機残留物を洗浄するクリーナー。
*12 低誘電率の絶縁膜を形成するための材料。
*13 高い耐熱性や絶縁性を持つ材料。半導体の保護膜や再配線層の形成に使用される。
*14 洗浄・乾燥工程に使われる高純度薬品。半導体製造の洗浄・乾燥工程で異物を除去したり、エッチング工程にて金属や油脂などを取り除くために使用する化学薬品。
*15 広範囲な波長の電磁波(光)をコントロールする機能性材料群の総称。デジタルカメラやスマートフォンに用いられるCMOS センサーなどのイメージセンサーのカラーフィルターを製造するための着色感光材料を含む。

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