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2024/8/26

【ISCC-CORSIA認証】丸住製紙大江工場、NEDO助成事業で取得

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業である「パルプからの国産SAFの一貫生産およびサプライチェーン構築実証事業」において、丸住製紙の大江工場(愛媛県四国中央市)が、国際航空分野における持続可能性認証スキームに基づくISCC-CORSIA認証を取得した。
 本事業において、助成先である三友プラントサービスBiomaterial in Tokyoは、持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)に関して、国産原料由来のパルプ調達から、バイオエタノールを経由したSAFの生産、空港供給に至るまでのサプライチェーンの実証に取り組んでいる。今回の成果は、助成先がパルプの供給を担当する丸住製紙と共に、SAF製造工程における温室効果ガス(GHG)削減効果を証明するために、原料調達からパルプ製造までのGHG排出量の算出などに取り組んだ結果得られたもの。
 本認証取得は、パルプの原料供給元である県内製材所も包括したグループ認証制度を活用しており、パルプ工場として認証を取得した世界初の事例となる。
 また、本事業ではパルプからバイオエタノールを経由してSAFを製造する実証プラントの建設を進めており、このプラントについても 本認証の取得に向けて準備を進めている。

背景

 二酸化炭素(CO2)排出量削減による地球温暖化抑止対策が航空業界における喫緊の課題となっている中、国際民間航空機関(ICAO)は、SAF※1の導入を必要不可欠な解決手段の1つとして位置付けている。
 日本は、2030年時点のSAF使用量として、「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」との目標を設定し、経済産業省と国土交通省が共同で設立した「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」(以下、SAF官民協議会)において、SAFの利用・供給拡大に向けた取り組みが進められている。なお、国際航空においてGHG削減効果のあるSAFとして認められるには、ICAOが承認する持続可能性認証スキーム(SCS)の定めに基づく認証の取得が必要となり、官民一体となって国産SAFの認証取得に向けて取り組みがなされている。

今回の成果

(1)概要
 三友プラントサービスおよびBiomaterial in Tokyoが合同で進めている本事業※2において、SAFの原料となるパルプの供給元である丸住製紙のパルプ工場が本認証※3を取得した。
 本事業では、製材所残渣などの廃棄物系木質原料から、パルプおよび第2世代バイオエタノール※4を経由したSAFの製造実証に取り組んでいる。今回の認証ではICAOの定めるルールに合致した廃棄物系木質原料の手配と中間製品となるパルプの製造までの工程について認証が取れたことになる。
 また、SAF官民協議会の流通ワーキンググループにおいてもCORSIAルールの理解促進や情報収集が進められており認証取得に対する期待が高まっているところ、本認証取得は同ワーキンググループから支援を受けるパイロット事業の活動として初めての事例であり、まさに官民一体による実績となった。
(2)CORSIA適格燃料
 CORSIA適格燃料は、原料生産からSAFの製造までに関わる事業者それぞれがSCSの定めに基づく認証を取得し、それぞれの事業者の間において定められた文書を発行することでトレーサビリティを確保して製造されるジェット燃料。認証を取得するには、10%以上のCO2などのGHG削減効果、始発原料が炭素を高度に貯留する土地由来でないことなど、持続可能性に関するさまざまな条件が求められる。
 今回の認証では、使用可能な原料を示すポジティブリスト(ICAO制定)に掲載済みの製材所残渣を始発原料としているが、パルプおよび第2世代バイオエタノールを経由したSAF製造のプロセスは世界的にも事例がない。本事業では現時点で実測値を有するパルプ製造工程までの部分について認証を先行取得したものとなる。
(3)意義と価値
 今回の丸住製紙による本認証取得は、パルプ工場として登録された世界初の認証かつ、SAF製造に関わる工程の一部として日本初の生産拠点認証※5となる。
 また、本認証ではパルプの原料として県内の製材所であるサイプレス・スナダヤ(本社:愛媛県西条市)から国内産木材由来の残渣チップを採用しており、海外から調達する原料と比較して輸送距離が短いことも、GHG削減効果を高める一助となっている。
 本事業は廃棄物系木質原料を始発原料として第2世代バイオエタノールを製造し、これを改質してSAFを製造する事を主軸とする事業だが、ICAOがSAFに求める基準を満たすことも実施項目の1つとしている。この基準はサプライチェーンに関わる企業全てに認証取得を義務付けるもので、今回のパルプ製造工程までの本認証の取得はその出発点となるものす。
 また、本認証の取得は新たなパルプ利用の可能性を切り拓き、パルプを用いたバイオリファイナリー産業の推進に大きく貢献するものと考えている。

今後の予定

 本事業では、パルプ供給以降の糖化・発酵によるエタノール化、脱水・重合反応を通じたSAF化を行う実証プラントの建設を進めており、このプラントについても本認証の取得に向けて準備を進めている。
※1 SAF
 Sustainable Aviation Fuelの略で、持続可能な航空燃料を意味する。持続可能性の条件を満たした再生可能あるいは廃棄物を原料とし、化石燃料と比較してGHG排出量を低減可能なジェット燃料を指す。
※2 本事業
 事業名:バイオジェット燃料生産技術開発事業/実証を通じたサプライチェーンモデルの構築/パルプからの国産SAFの一貫生産およびサプライチェーン構築実証事業
 事業期間:2022年9月2日~2025年3月31日
 事業概要:バイオジェット燃料生産技術開発事業
※3 本認証
 SAFの利用によるGHG排出削減効果を主張するには、国際民間航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム(CORSIA:Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)に基づき、国際民間航空機関(ICAO)が承認する持続可能性認証スキーム(SCS)による認証が必要となる。ISCC-CORSIAはSCSであるISCC(International Sustainability & Carbon Certification)による認証の1つを指すもの。
※4 第2世代バイオエタノール
 糖やでんぷんを原料とする第1世代バイオエタノールとは異なり、食料と競合しないセルロース系原料由来のバイオエタノールを指すもの。
※5 パルプ工場として登録された世界初の認証かつ、SAF製造に関わる工程の一部として日本初の生産拠点認証SCSであるISCCとRSB(Roundtable on Sustainable Biomaterials)を管理する団体のホームページの情報による。(2024年8月20日現在)

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