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2025/4/24
【LiB】豊田中央研究所、「電池循環システム」を構成する要素技術群と評価手法提案
豊田中央研究所は、車載用リチウムイオン二次電池(Lithium-ion Battery、以下LiB)のリユースやリサイクルを通じて、LiBをめぐる循環型社会の実現を目指す「電池循環システム」研究プロジェクトを推進している。このたび同社は、LiBのライフサイクル全体を通じて環境に放出される二酸化炭素(CO2)を、定量的に評価する手法を提案した。リユース/リサイクル技術によるCO2削減効果を統合して評価できる同手法は、LiBをめぐる循環型社会のシステム構築や、その要素技術開発の羅針盤となることが期待される。この研究成果は、Elsevierの論文誌「Journal of Power Sources」に掲載された。

背景
自動車の電動化や再生可能エネルギー設備への導入を背景として、LiBの需要は近年ますます高まっている。LiBを新規製造する場合に比べ、リユースやリサイクルを行うと資源消費量やCO2排出量を削減できる可能性があるため、世界中でリユース/リサイクル技術の開発が進んでいる。豊田中央研究所でも「電池循環システム」という研究プロジェクトを掲げ、中古LiBを結合して電力バッファとしてのリユースを促進する「SWEEP SYSTEM®」、使用済みLiBの状態診断技術「MaMoRiS®」、長寿命化・高容量化を実現したコバルトフリー正極材料、LiBのリサイクル時のリスクを低減する不活性化技術「iSleep®」、使用済みLiBの容量回復技術「iCure™」など、これまでに様々な要素技術を開発してきた。
一方で、LiBの循環型社会を実現するには、各要素技術を組み合わせて社会システムとして機能させることが必要。そこで近年重要視されているのがLiBのライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment、以下LCA)。LiBが生産されてから廃棄されるまでのライフサイクル全体を通じて環境に与えた負荷を定量的に評価するというLCAの考え方は、要素技術の開発や社会システムの設計をする上での羅針盤になるものとして期待されている。
従来LiBのLCA手法はいくつも提案されてきたが、評価対象を特定の工程や部材だけに限定せず、ライフサイクル全体を通した評価を実現することや、リユースとリサイクルを別々に評価することで効果の一部が二重にカウントされてしまう問題の解決などが求められてきた。豊田中央研究所は、LiBをめぐる循環型社会の実現に向けて、リユース・リサイクルの要素技術の開発とLCA手法の開発を、両輪で進めてきた。
研究の内容、今後への期待
このたび豊田中央研究所は、リユースとリサイクルを統合して評価可能な新たなLCA手法を提案した。この手法は、LiBのライフサイクルを詳細にモデル化し、各工程での選択がCO2排出量に与える影響を評価する。リユースとリサイクルの効果をより正確に定量評価できるだけでなく、類似する技術間の比較といった詳細な分析ができることが特徴。
例えばリサイクルにおける電極材料の回収技術を想定した場合、既存の回収技術に対する新技術のCO2の削減効果を定量的に評価することが可能になった。リサイクルをするかしないかといった0か1かの違いではなく、投入するエネルギーの種別や量に応じて回収効率にどのような差が生じるのかといった細かな違いを、LiBのライフサイクル全体を通して評価することで、社会的に意義のある技術開発につながると期待される。
LiBをめぐる循環型社会の実現に向けては、要素技術を開発するだけでなく、科学的なコンセンサスに基づいた社会システムのデザインが求められる。豊田中央研究所はこのLCA手法を活用したLiBのリユース・リサイクルの将来シナリオの議論を、大学等研究機関や学術団体等との連携をさらに進めることで深めていく。
当社はこれからも、革新的なリユース/リサイクル技術の開発、および社会システム構築に資するLCA等の評価技術の提案を続け、LiBをめぐる循環型社会の実現に貢献してまいります。
<論文情報>
タイトル:Life Cycle Assessment Integrating the Effects of Recycling and Reuse for Battery Circulation
掲載誌:Journal of Power Sources
著者:小林哲郎、近藤広規、佐々木厳
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jpowsour.2024.235544
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