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2025/7/28

【MI】EAGLYS、ALCHEMISTAを活用し三菱ケミカル・大塚化学が材料開発期間を大幅短縮

 EAGLYS三井物産ケミカルが提供する秘密計算を活用した次世代マテリアルズ・インフォマティクスソリューション「EAGLYS ALCHEMISTA(イーグリス・アルケミスタ、以下「ALCHEMISTA」)」を用いて、三菱ケミカル大塚化学が連携して行った新規材料開発において、開発の大幅な効率化を実現した。この取り組みでは、通常であれば早くても2~3年を要する開発期間を1年未満に短縮し、顧客に提供可能なビジネスレベルのサンプル作成に成功した。

1.背景

 マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を利用した材料開発では、開発期間を従来比で30~50%短縮できる事例も報告されている。グローバルな市場競争が激化する中、MIを利用した開発スピードの向上は企業の競争力に直結するため、材料開発におけるサプライチェーン間の連携が必須である。しかしながら、サプライチェーン間では機密保持の観点からデータ連携が十分になされないため、従来の開発手法からの脱却が困難で、MIの活用は限定的なものにとどまっていた。そのような課題に対して、データを暗号化したまま計算できる秘密計算を利用することで、企業間の機密は保持したまま双方のデータを利用したMIによる開発効率の向上、開発期間の短縮を可能とするのがALCHEMISTAである。

2.ALCHEMISTAを利用した開発のイメージ
                        

3.今回の取り組みにおける成果

 三菱ケミカルと大塚化学は、2024年7月からALCHEMISTAを活用し、企業間データを連携して新規材料開発を行ってきた。従来であれば早くても2~3年を要する材料開発プロセスを大幅に短縮し、1年未満で顧客にサンプルとして提供可能なビジネスレベルの材料開発に成功した。

  同取り組みでは、秘密計算を利用することにより「コミュニケーション」と「データの出し方」という2つの側面において革新的な変化を実現した。従来の材料開発では、企業間のやり取りは定性的な表現に頼ることが多く、機密保持の観点から具体的かつ定量的なデータはなるべく隠すという姿勢が基本であった。

 しかし今回の取り組みでは、秘密計算による安心のもと、目標とする物性の予測精度を向上させるために両社が積極的にデータを提供することで、データに基づく具体的、定量的な議論が可能になった。これまでとは対照的なアプローチを実現し、データの価値を最大限に活用した結果、大幅なリードタイム削減と効率化を達成した。

4.今回のリリースに関する各社のコメント

三菱ケミカル
アドバンストフィルムズ&ポリマーズビジネスグループ
R&D本部 パフォーマンスポリマーズテクノロジーセンター 
コンパウンドテクノロジーJapanグループ
グループ長 進 学治

 これまでの企業間開発では、限られた情報の中で、過去の知見や洞察力を頼りに、実験結果を整理し、次の改良材を提案するという試行錯誤のサイクルを幾度も繰り返してきました。これに対して、ALCHEMISTAを利用した大塚化学との開発では、抽象的なアウトプットではなく、解析データに基づき、各種指標や目標値との乖離を双方で明確にとらえ、議論を展開していくことができました。通常は得られないであろう情報を活用できたことで、従来よりも早い段階で結果を解釈でき、改良の方向性がつかめたと思います。設計技術やノウハウなど機密情報に制約がある企業同士の開発において、迅速かつ的確に目標達成を支援する有用なツールであると実感しました。

大塚化学株式会社
研究開発本部 材料開発研究所
所長 石井 好明

 従来の研究開発では、協業パートナーに具体的な目標物性や社内ノウハウを開示することが容易ではないため、事前に明確なゴールを共有できませんでした。そのため、定性的な情報交換の中で経験や勘を頼りに検討候補を模索する必要がありました。ALCHEMISTAを活用した三菱ケミカルとの取組においては、開発上の具体的な目標値を安心して共有できる環境が整い、定量的なデータ解析に基づいた意見交換・協議を行うことができました。その結果、従来の研究開発よりも効率的に最適な材料開発が加速できたと感じています。協業パートナーと共通のゴールに向かって連携することが可能となり、より強固な企業間連携を実現する有効なソリューションであると実感しました。

三井物産ケミカル株式会社
機能化学品本部 パフォーマンスマテリアル事業部 アドバンスケミカル(イースト)室室長 高橋 雅信
 本PoCに携わる事になり、材料開発案件の進め方に於いて新たな可能性を実感することが出来ました。今回特に強く感じたポイントは「従来の開発協議の場で行っている定性的な流れは同じ」であったことです。そこにALCHEMISTAが入ることで、本来は開示することが出来ないデータに裏付けられた確かな根拠を基に、双方の方向性に沿った議論がなされていました。一見、意味を持たないと感じたデータも、複数の要素が絡まることで新たな答えを素早く導く手助けとなります。まだ発展途上ではありますが、データ量が増えることで無限の可能性を秘めた技術であると感じております。本技術を多くのお客様に体感頂き、データ連携による新たなビジネス創出や材料開発の効率化を目指して参ります。

EAGLYS株式会社
代表取締役社長 今林 広樹
 ALCHEMISTAの革新的な価値にご共感いただき本取り組みを共に実現いただいた関係各社の皆様に、心より感謝申し上げます。2016年の創業以来「秘密計算こそが産業AIのインフラとなる」という確信のもと、技術研究と実証実験を積み重ねてまいりました。そして、創業9年目にして遂に「通常2-3年を要する開発期間を1年未満に短縮」という常識を覆す成果を実現できたことに深い興奮と感動を覚えております。秘密計算が可能にしたのは単なる効率化ではなく、日本が世界に誇るすり合わせ開発という匠の技をデジタル時代に最適化された開発プロセスへと進化させたと考えております。この次世代のすり合わせ開発を業界の皆様と共に発展させ、日本の材料開発力の飛躍的向上と、グローバル市場における産業競争力の強化につながるよう、これからも力強く事業を推進してまいります。

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