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2024/8/7

【PFAS】埼玉県環境科学国際センター、分析用標準試薬の専用保存容器開発

 有機フッ素化合物(PFAS)は、かつて撥水・撥油性、熱・化学的安定性等の有用な特性から幅広く使用されてきたが、自然環境中や体内で分解されにくく、健康への影響が懸念されている。PFASの中でも、有害性のほか、難分解性、高蓄積性などの特性があるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、国内では製造・輸入等が原則禁止されている。
 PFASの分析には、あらかじめ濃度がわかっている標準試薬が必要だが、これまで分析に使用していた標準試薬の保存容器は、試薬の揮発やフッ素化合物の溶出など、長期間の安定的な保存に課題があった。
 そこで、埼玉県環境科学国際センターではラブディポットとの共同研究により、これらの課題を解決した保存容器を世界で初めて開発した。このことにより、PFASの正確な測定を可能にし、自然環境中の実態解明に大きく 貢献する。9月の国際学会で世界に向けて発信していく。

開発したPFAS分析用保存容器

PFASとは
 有機フッ素化合物の総称で、撥水・撥油剤、界面活性材や消防機関などの消火装置で使用される泡消火剤など、幅広く使用されてきた。PFASの中でも、有害性のほか、難分解性、高蓄積性などの特性があるPFOS、PFOAは、環境や食物連鎖を通じて人の健康や動植物の生息・生育に影響を及ぼす可能性が指摘されていることから、それぞれ2009年、2019年に世界的に輸出入、製造、使用が禁止、制限されている。
 また、国内においても、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づき、製造・輸入等を原則禁止されている(PFOSは2010年、PFOAは2021年)。
 現在、日本の河川・地下水等の水環境では、PFOS、PFOAの暫定指針値(PFOSとPFOAの合計濃度:50ng*/L)が設定されている。また、水道水についてもPFOSとPFOAの合計濃度が 50ng/L 以下とするよう暫定目標値が設定されている。
*ng(ナノグラム):10億分の1グラム。東京ドームいっぱいの水に角砂糖1個を溶かしたときの濃度が ng/L 相当。
開発した保存容器の特徴
 通常、化学物質の濃度測定には標準試薬(あらかじめ濃度がわかっていて、濃度を測定するときに基準となる液のこと)が必要で、それを保管する保存容器が市販されている。しかし、PFAS分析用の標準試薬の保存に関しては、以下の課題があった。これらの課題は、分析対象が、ng/L 単位の濃度を分析するため、分析値に大きな影響を与える。
1.容器の気密性
 蓋に隙間があるとPFASを溶かしている液(溶媒)が蒸発して標準試薬の濃度が変わる。
2.容器の素材からの PFASの混入
 フッ素樹脂が使用されている市販の容器では、PFASが混入するおそれがあり、保存容器中の標準試薬の濃度が変わる。
 埼玉県環境科学国際センターは、ラブディポットと PFAS分析用標準試薬の専用保存容器に関する共同研究を行い、デザインの提案、材料の選定、並びに標準液の保存性の評価を行った。開発された保存容器は製品化され、2024年7月に販売が開始された。

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