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2024/1/12
【PPSコンパウンド】DIC/塚田理研工業/吉野電化工業、めっき可能な「DIC.PPS MP-6060 BLACK」開発
DICは、塚田理研工業および吉野電化工業と共同で、めっき可能なPPSコンパウンド「DIC.PPS MP-6060 BLACK」(以下「MP-6060」)を開発した。本開発品とめっき技術の組み合わせにより、特殊なエッチング工程*1を必要とせず、既存のプラスチックめっきラインでスーパーエンプラPPSの金属めっき処理が量産可能となる。
PPSに金属めっきすることにより、耐久性が必要とされる電子機器筐体やコネクタなどの金属部品の樹脂化と電磁波シールドの両立が可能となる。特に、電動化や自動運転化が進む車載部品では、ECU(電気制御ユニット)やADAS(先進運転支援システム)の筐体などの樹脂化が軽量化につながり、燃費効率と航続可能距離を向上させることで、性能とサステナビリティの両面での貢献が見込まれる。今後、電気自動車(EV)やPCなど耐久性が必要となる電子機器分野を中心に需要を取り込むことで、2030年の売上高30億円を目指す。
開発の背景
近年、スマートフォンやWi-Fi機器など、電磁波が通信手段として幅広く利用されている。また、スマート家電や自動運転の普及により、電磁波の使用がますます増加すると予想されている。電子機器が増加し、密集した配置で設計を行う場合、信号干渉による誤作動や故障を防ぐため、ノイズとなる電磁波を遮断、吸収する等の制御が必要となっている。
PPSはスーパーエンプラとしての耐久性や軽量化、加工性などの長所から、車載電子機器などに使用されてきた。金属等の電気導体では電磁波の遮蔽効果が得られるが、プラスチックは電磁波を透過するため、筐体として電磁波を防ぐにはプラスチック表面に金属皮膜を形成するなどの電磁波シールド技術の使用が必要となる。しかしながら、PPSはその高い耐薬品性から一般的なプラスチックめっきで用いられるエッチング溶液が前処理に使用できず、金属膜との密着が難しいとの課題があった。これまで、めっき密着性を付与するために「ブラスト処理」「プラズマ処理」「フッ酸処理」「濃硝酸処理」などの特殊なエッチング工程が必要であった。
このたび開発されたMP-6060は、クロム酸などの汎用溶液でのケミカルエッチングが可能で、既存のプラスチックめっき設備で金属めっきが可能となった。
MP-6060の特長
1.スーパーエンプラとして高強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性に優れるPPSに各種金属めっきを施し、周波数帯に合わせた電磁波シールド特性や、金属外観等の価値を付与できる。
2.DICのPPS配合技術と塚田理研工業・吉野電化工業のめっき技術を掛け合わせることで、汎用プラスチックめっきラインでめっき量産可能。耐薬品性の高いPPSめっきに使用される特殊な薬液管理も不要で、ブラスト処理が苦手とする複雑形状にも均一にめっきが可能となる。
3.高い成形流動性も兼ね備えているので、リブ*2や冷却流路などが必要な複雑形状にも成形可能。
4.PPSの特長である過酷な環境での優れた耐久性に基づいて、車載部品の樹脂化による金属代替、軽量化を実現することで、自動車の燃費効率の向上をもたらし、航続可能距離の改善に貢献する。
*1 エッチング工程:表面処理の一種で、素材表面を粗化して、表面に付着させた金属めっきの密着性を高めるための方法
*2 リブ:反り・ねじれなどの変形を防ぐために設けられた突起状をした補強部分
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