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2024/11/12
【Printing】北京印刷学院、中国国内のフレキソ印刷とグラビア印刷のCO2排出量を比較する独自調査を実施。フレキソ印刷はグラビア印刷と比較してCO2排出量を劇的に削減
<2024年11月12日、東京(日本)およびブリュッセル(ベルギー)発>旭化成の子会社でフレキソ印刷用感光性樹脂版開発のパイオニアである旭化成フォトプロダクツ社は2024年11月12日、中国の独立機関である北京印刷学院(BIGC)と共同で、溶剤インキを使用したグラビア印刷と、水性、溶剤、UVインキを使用したフレキソ印刷のカーボンフットプリントの違いをより深く理解するための調査を実施したと発表した。
BIGCは、印刷、出版、メディアに焦点を当てたアジアで有数の総合大学であり、中国における出版および印刷の高等教育の先駆者。この独立研究は、BIGC印刷・包装工学学院教授、博士、教師、北京印刷電子工学技術研究センター所長であるMo Lixin氏の指導の下、2023年10月1日~12月4日の間に実施された。本研究の論文は2025年1月に公開される予定。
「フレキソ印刷には、他の印刷技術に比べて環境に優しく、幅広い基材に対応でき、高速大量生産が可能、また他の印刷方法と組み合わせができるフレキシビリティなど、数多くの利点があります」とMo博士は説明する。「これらの利点により、ヨーロッパやアメリカのパッケージ印刷市場でフレキソ印刷が広く使用されています。統計によると、フレキソ印刷製品で特に食品などで多く使用されるフイルムを基材を用いる軟包装でみると、米国では70%以上、ヨーロッパ諸国では約50%を占めています。しかし、中国では、グラビア印刷が主流で、市場シェアの90%以上を占めています」。
これを念頭に、BICGは中国の包装印刷業界におけるフレキソ印刷とグラビア印刷企業の現在の発展状況を調査するために、アンケート調査と現地調査を実施した。この調査は、フレキソ印刷技術の比較優位性、既存の欠点、および持続可能性の側面を含む発展の可能性を分析することを目的としていた。
この調査の結果、中国の印刷・包装会社がグラビア印刷からフレキソ印刷に切り替えるか、もしくはフレキソ印刷を業務に導入し始めることで、持続可能性の面で大きなメリットが得られるという結論が出た。
「最も重要な持続可能性の利点は、水性インキを使用したフレキソ印刷と溶剤インキを使用したグラビア印刷を比較したときに明らかになりました」とMo博士は付け加えた。「水性インキを使用したフレキソ印刷では二酸化炭素の排出量が4CO2eq/m2未満であることがわかりました。一方、溶剤インキを使用したグラビア印刷では、なんと140kg-CO2eq/m2という驚くべき結果が出ました。これは136kg-CO2eq/m2の削減、つまり排出量は35分の1です。全ての印刷会社でこの差が示されるわけではありません、サンプルの中でグラビア印刷の少ない結果では、排出量は34 kg-CO2eq/m2でした」。
更にMo教授は、フレキソ印刷で溶剤インキを使用した場合で比較しても、グラビア印刷では1m2当たりフレキソ印刷の3倍以上の二酸化炭素が排出されると指摘した。これは、両方の印刷技術が導入されている印刷会社で、同じ銘柄の印刷を実施し得られた結果である。
「中国のパッケージ印刷業界での長年の経験から、業界の人々が市場のゲームチェンジャーを待ち望んでいることに気づきました」と旭化成のテクニカルアドバイザーの鈴木優稔氏は述べている。「BICGの中立的な調査は、そのゲームチェンジャーがここにあることを明確に示しています。それは、中国のパッケージ印刷業界におけるフレキソ印刷とグラビア印刷を比較したライフサイクルアセスメント(LCA)の事実データ比較調査です。中国では政府の規制が最も強力であり、近い将来にCO2排出に関する厳しい規制が課されることは間違いありません。この調査は、それらの規制の実施を加速させる可能性を秘めています」。ブランドオーナーとコンバーターはどちらも、最初はコストがかかっても、フレキソ印刷への投資について今すぐ検討する必要があります。彼らの決定は、2060年までに炭素中立化を目指す政府のコミットメントに役立ち、中国に住む我々世代だけでなく、彼らの子供や孫が暮らす安全で快適な未来と世界を実現できる。
コンバーテック編集部補足:現状、すべてのフィルム包材の印刷に水性フレキソインキが使える訳ではない。
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